bilanc chapel -布の天秤-
絶えず変容する光,風,温度,湿度そして風景
この地に棲むひとは見慣れた緑の風景である
一方で初訪のひとは目新しい風景である
どちらも同じ風景であるのに「慣れ」によって感覚は異なる
ハレの日は五感の多重体験をして皆が記憶に残る日であってほしい
そんな想いで布の天秤を空に浮かべた
布の天秤はそれ自体の重力と風船の浮力とで釣り合う天秤である
空に浮かぶ屋根の素材は花嫁の衣装とマッチするものを求めた。
しなやかで柔軟に密度を変えられ、足し引きが自由にできる布を選んだ。布の種類は軽量で最も単純な縦横1本ずつの織り方でつくられるオーガンジーを選定した。数か所の開口は2箇所に鋏をいれるというだけの単純な操作で風の吹上を抑制し,垂れた布は風になびくことで緑葉と連動する。風船は立体360°の風景を映しこみ,さらに風船同士で反射しあうことで幾重にもレイヤーを重ねながら風景に溶け込んでいく。
布の天秤は均衡を保ちながら風で揺れ、木漏れ日を透かし、風景を透写する。
bilancはバランス(balance)の語源で天秤,均衡,つり合いなどを意味するが,浮力-重力,夫-妻,人-人の関係もバランスがとれたものでありたい。
DETAIL
1日限りの仮設チャペルであり、施工時間は式前日の夜2時間と当日の式までという短時間だった。そして施工は友人たちによるものであったため、設置を簡略化する必要があった。
支持部についてジョイントは釣り具のサルカンを使用し、糸は手ぐすを使用することで強度を確保しつつ、簡易的に設置できるようにした。
浮力をもつ風船の引張部分も同様にサルカンを布に通すことで支持する仕組みとした。
DATA | |
所在地 | 熊本県 四季の丘 メゾンドフォレスト |
用途 | chapel (仮設) |
テキスタイル | Atelier Scale Daisuke Yamamoto |
施工 | Kohei.N Ryo.S Kiyoshi.F Masahisa.E Yoshikazu.N |
協力 | 四季の丘 seasons with staff |